漫画を二冊買う。新品で新作を買って面白かった時の心地よさはこの上なくいいものです。
鋼鉄の華っ柱
天使な小生意気とか今日から俺は! の西森博之の新作。これ始まるちょっと前にサンデーを読むのをやめてしまったので、単行本派になった。この人が前に描いてた『お茶にごす』が大変好きな漫画だったので期待して読んだんだけど、やっぱ面白いなあ。
主人公は数兆円くらい持ってる資産家の息子でスポーツ万能で成績優秀で性格は(少なくとも表面上は)温厚。いろいろ完璧だったんだけど、家が没落して親が逃げて、無一文になちゃう。
普通はそれで、庶民の暮らしをすることになった主人公の金持ち特有のズレた感じをネタにしつつ、「彼は世間の厳しさとかを知りながらちょっとずつ真の意味で成長していくのだった」的な漫画になっちゃいそうなところだけど、この人はそういう部分をかわすのが本当に上手い。
なにこいつかっこいい。
以前、宝探しゲームのために埋めておいた金貨(自分の最後の財産)をお付き兼幼なじみの姉弟に選別として渡し、素寒貧になった上で、この↑台詞。
基本的に主人公の御前崎くんは紳士然とした態度を絶対に崩さない。ので、そういういちいち格好いいことを言う主人公と、お付きの人の「お前、この状況でもまだ紳士でいられるのかよ!?」というリアクションを楽しむのが、この漫画の面白さの一つの主軸になってる。
「意外な、あるいは危機的な状況でもキャラを貫きとおす時の面白さ」みたいなのはこの作者のお家芸というか、この人の漫画特有のメソッド的なところがあると思うんだけど、なかなか魅力が説明しにくくて困る。単純に現象を過剰にしてるだけじゃ出ない切れ味が西森漫画にはあって、どうしてこれが面白いんだろう、というのが凄く解析しにくい。ふしぎ。
ともかく、いつものキレは今作でも存分に発揮されてることが確認できたので、次巻以降も楽しみにして生きていく。
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アーサー・ピューティーは夜の魔女
面白さの説明しにくい漫画が世の中にはあって、それは性質的に文章にしにくいこともあれば、面白い部分が致命的にネタバレになってしまうというようなことも、まああり得ます。『鋼鉄の華っ柱』は前者で、この漫画は、半々かな。
で、世の中にはそういう時の便利なメソッドとして、「○○を描いていた××先生の新作!」みたいな紹介の仕方があって、それで面白さが伝わるかどうかはともかくとしても、ひとまずわかりやすいとは思うので、↑はそういうところから書き始めた訳です。他にも例えばサンデーでいうなら、「今度の新連載、ガンガンで『鋼の錬金術師』を描いていた荒川先生の新作らしいよ!」とかね。とりあえず、ツカミとしてはいいと思う。そういう紹介がキャッチーな作品だと、他人に勧める時にもハードルが低くていいです。
で。
この漫画はというと、チャンピオンREDで『フランケン・ふらん』を描いている木々津克久の作品で、メディアファクトリー刊フラッパーコミックス。
うん、ハードルたかい(内容もだが、RED→フラッパーって辺り特に)。
REDでやってる『フランケン・ふらん』は非常に面白い漫画で、主人公のふらんちゃん(美少女)が、人類離れした外科技術で依頼人の抱える問題を解決してあげる、というような内容のブラックジョーク系のSFコメディです。グロ系の手術で依頼人は大抵クリーチャー的なものにされて、人によってある程度幸せになったり、あるいは相応の報いを受けたりする、みたいな話。内容としては、たぶん『笑ゥせぇるすまん』に近いんじゃなかろーか。主人公医者だから、その辺はちょっぴり『ブラックジャック』。足して二で割って萌えで和えて……というような漫画、だと思う。カオス。
そういう、ちょっと黒いほう寄りに独特のセンスを持った作者なんですが、今回もわりとそういう話。面白かった。以下、第一話ネタバレになります。
表紙には美少女。帯が「目を覚ませ! 我々は操られている!」で、裏が「突如迫りくる戦慄のイキモノたち!?」「六十億を越える怪物たちが我々を追いはじめる。原因はいったいなんだ!?」
というわけでパニックものかと思うんですが、全然違う。話は、人間に寄生する未知のバクテリアが発見されるところから。空気感染で爆発的に増殖し、世界中に広まったこのバクテリア。これに感染した人間は知能指数がアップして、体力も増大する。知覚も鋭敏になってるっぽい上、こういう話にありがちな副作用も一切描かれてない(たぶん)。人間にいいことずくめのバクテリアが蔓延するわけです。
で、知能が上がった人間たちは、自分たちの目を欺き、自分たちを支配している化け物が存在することを知覚してしまう、と。それに気づいた人間たちは化け物狩りを始め、狩られる側にまわった旧支配者(クリーチャー)の逃亡生活が始まる……という話。表紙の美少女の正体は、体内からネズミをわんさか出したりできる無敵気味の怪物。
「目を覚ませ! 我々は操られている!」って本当に操られてるのかよ!? とか、「戦慄のイキモノ」って主人公側か! とかいろいろ突っこみたくなりますが、一巻にわたってどの話も非常にブラックでよろしい感じでありました。「化け物(巨人)倒したけど、こいつらでかいから死骸の処分に困るな……」「よし、喰おうぜ。あ、うめえ」とか(人間側のやりとりです)。
グロいんだけど萌えるみたいなギリギリの絵柄と、凄く胸糞悪いんだけども気持ち悪くはならないみたいなギリギリの話が調和した、結構貴重な綱渡りに成功してる漫画だと思いました。絵は紹介しない。理由は察して下さい。
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